夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
そう言って涙を流す仁菜。私は背中をさすることしかできなかった。

仁菜がいじめられなければいけない理由とは何なのだろうか。私が見ていたことでは悪いところが見つからないくらい、優等生みたいな人だった。

わからない。だけど、許せない。私の友達を自殺に追い込むほど傷つけるなんて。

「辛かったね、よく頑張ったよ。何もできなくて本当にごめん」

そう。無力で弱虫な自分。こんな私はもうやめたいと初めて今思った。もう大切な人を失わないためにも。

「何もじゃないよ。教科書貸してくれたり、心配もしてくれた。なのに、私は……」

このあとに続くのはきっと、どうして相談できなかったのという言葉だろう。

そう言って大声を出して子供のように泣く仁菜。こんな彼女の姿を見るのは初めてでよっぽど辛かったんだと思い知る。

私があの時、頼れなかった理由は裏切られるかもしれないという恐怖からだった。どういう理由で誰から始まったのかは知らないけれど、いじめを受けた者同士であることは間違いない。

だから気持ちも少しはわかる。だけど、救えなかった償いとしてちゃんとわかってあげたい。受け止めれるかどうかじゃなくて受け止めるんだ。弱虫なのはもうやめよう、そう固く決心した。

「それはいつから始まっていたの?」

「二ヶ月前から」

泣いている顔を見せたくないのか俯きながら仁菜はそう言った。

「最初は男子一人だったんだけど、そのうち増えていって、気づいたらクラスのほとんどが私をいじめてた」
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