夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
椿はそう言って頭を下げる。謝れるのは慣れていないのか、申し訳なくなった。

椿はそのまま、言葉を紡ぎ続ける

「俺はその悲しみを紛らわしたかった。それで気づいたら盗人のようなことをしたり、暴力を振るっていた」

目が覚めたように椿はふっと笑った。きっと私の『やめて!』という言葉が彼の目を覚まさせたのだろう。

誰かを呪いたいとか復讐のような理由ではなかったことにホッと胸を撫で下ろした。

「そっか。辛かったね」

私はそう言って椿の身を優しく包んだ。どうしてこんなことができたのか、それは後になってもわからないことだった。でもきっと椿の頬に涙が伝っていたのが見えたからだろう。

椿は嗚咽を洩らしながら声を押し殺して泣く。胸の奥に溜め込んでいた悲しみをすべて吐き出すかのように。

私はそれを受け止めるのが自分で良かったのだろうかと申し訳なくなりながらも必死に受け止めた。

____椿なんか大っ嫌い!____

昨日の夜、そう心の中で叫んだ言葉は帳消しにしよう。

晴れやかな空の下、梅雨時の生ぬるい風に頬を撫でられながら、椿は私の胸に顔を埋めて泣いていた。その弱々しい背中をさすりながら昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴っているのを聞いた。
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