癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。


 この王様が使ったウエルカムと言う言葉は愛来が教えた言葉だった。この言葉を王様はいたく気に入り、こうして時々使うのだった。


 *


 今日のお茶会は大変だったなぁ。

 めっちゃ疲れたわ。

 愛来は湯浴みを終え、ベッドの上を転げていた。

 そんな愛来の気持ちを察したリミルが気持ちを和らげ、よく眠れると言うハーブティー用意してくれていた。

「さあ、愛来様ハーブティーが入れ終わりました。飲んだらゆっくりと休んで下さいね。もうすぐ殿下がいらっしゃると思いますので私は隣のに控えております」

 ふふふっと嬉しそうに部屋から出て行くリミルに何か言い返したいが、言葉が見つからなかった。

 もうすぐウィルがお休みの挨拶にやって来る。それはキスをしに来ると言うことで……。

 キャーー!!

 せっかく気持ちを和らげるハーブティーを飲んでいるというのに意味が無い。愛来が悶絶していると、テーブルの上に可愛らしいピンクの包み紙が目に入った。

 あっこれ、お茶会の帰りにウィルに手渡された袋。確か中にお菓子が入ってるって言ってたけど何だろう?

 袋の中には……。

 これは、こんぺいとう?

 ピンクや黄色、水色といったカラフルなこんぺいとうが、沢山入っていた。その中からピンクのこんぺいとうを一つつまみ口に入れると砂糖の甘味が広がり綿菓子のように口の中で消えてしまった。

 あれ?

 形はこんぺいとうだけどやっぱり違うみたい。

「でも美味しい」

 愛来がもう一つこんぺいとう?を口に入れようとしたところで、ギルがピョンピョンと跳ねながらキューキュー鳴いていた。

「ギルちゃん食べたいの?」

 愛来は黄色のこんぺいとう?をギルの口元へと持って行くと初めて愛来の手から食べ物を口にした。

 余りの感動に愛来は打ち震え、放心状態でいると、そこへウィルがお休みの挨拶にやって来た。いくら扉をノックしても返事の無いことを心配たウィルが、そっと扉を開くとそこには震えている愛来の姿があった。ウィルは驚き声をかける。すると愛来はクルリと振り返り、ウィルめがけて突進するように抱きついてきたのだった。

そんな愛来を体幹がぶれることなく受け止めるウィル。毎日の魔法騎士団での訓練で鍛え上げられていることがよくわかる。

「それでどうしたんだ?」

自分の腕の中でプルプル震える可愛らしい愛来を優しく抱きしめると、涙に濡れた大きな黒い瞳が上目遣いで見上げてきた。

「ウィりゅーー」

舌足らずに自分の名前を呼ぶ愛来の声に、ウィルは「ぐはっ」っと口から吐血するのではないかというほどの衝撃を受ける。

なんなんだこれは夢なのか夢なんだな。なんどもこんなシチュエーションを夢に見てきた。

しかしこの腕に抱きしめる感触は本物だ。

これは神からの褒美に違いない。


ぐおおっっっ!!

神よ!!






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