癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
「ウィりゅーー」
愛来はギルがこんぺいとう?を食べてくれたことが嬉しすぎて、ウィルが悶絶していることに気づかなかった。
「ウィルこれありがとう。すごく美味しくて、ギルちゃんと一緒に食べたんだよ」
「ああ、これはシュリーだ。気に入ったのならよかった。ギルも食べたのか?よかったな」
「うん」
満面の笑みを見せる愛来。
くそッ……可愛すぎる。
ウィルの悶絶地獄の日々はここから始まるのだった。
***
愛来の回想はここで終わった。
「ほほう。そんなことがあったのか。ガギル・ドラコはシュリーが好きなのだな」
「そうなんです。でも一日一粒しか食べません。それで満足らしくて……他にも砂糖を使ったお菓子を試してみましたが興味はないようでした」
そう、ギルちゃんは一日シュリー一粒しか食べない超低燃費動物。日本にこんな動物いたら餌代かからなくて、人気でるかも。なんて、どうでも良いことを考えてしまう。
そこへ本日二人目の患者さんがやって来た。
「おはようございます。先生、聖女様」
そう言って扉から顔を覗かせたのは近所に住むレイニーちゃん七歳。
長い茶色の髪の毛を両耳の横から三つ編みにしていて、瞳の色も髪と同じ茶色でくりくりとした大きな目で見つめられると、余りのかわいさに抱きしめたくなってしまう。
そんなかわいいレイニーちゃんは小さいのにとてもしっかりしていて定期的に薬をもらいにやって来る。
「今日もお使い偉いね」
愛来はライデン先生が用意してくれていた薬をレイニーちゃんに手渡した。
愛来に褒められて嬉しそうなレイニーちゃん。
しかし薬の袋を手に持ったまま帰る様子がなく、モジモジとしながら愛来を見つめていた。
ああ……あれね。
ふふふっ。
愛来は笑いながらレイニーちゃんの手にあめ玉を握らせた。
「はい。お手伝いのできるレイニーちゃんにご褒美」
「聖女様ありがとう」
天使のように可愛らしい笑顔でレイニーちゃんは帰っていった。
その日の午後、隣町から一台の馬車が到着した。馬車と言っても貴族が乗るような豪華な馬車ではなく、荷馬車だった。定員オーバーに見えるその馬車から出てきたのは十一人で、ライデン治療院の扉を叩いた。
「聖女様がいらっしゃる治療院はこちらですか?」
最近聖女様ってみんな言うな。
だからといって自分から、はい。そうです。何て言えない。
愛来は聖女様と言われることにかなり抵抗をもっていた。
「えっと、針治療をご希望ですか?」
「ああそうだ。聖女様にお願いしたい」
「後ろの方々もですよね?全員で何人ですか?」
「十一人だ。やってもらえるか?」
「分かりました。準備をしますので、少々お待ち下さい」
愛来は診察室の衝立をどけ診察台も外へと出した。広くなった部屋の床に布を敷き詰めると五人ずつ横になってもらった。