癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
*
暖かいな。
安心する。
優しい匂い。
何だろう?
ふわふわして……ずっとこのままでいたい。
好き……だな。
「俺も……」
ん?
この声は……。
そっと重たい瞼を開くのと同時に温かく柔らかい物が唇を塞いだ。
「……っん」
寝ぼけた頭では何が起きているのか分からず、されるがままの愛来の唇についばむようなキスが続く。
「っん……んっ、ちょ……まって」
愛来は自分の目の前にいる人物の胸を力いっぱいに押した。すると視界の先に現れたのは、翡翠色の瞳を細める嬉しそうなウィル顔だった。
「おはよう。愛来」
流石は王子様。爽やかな笑顔が良く似合う……。って、
ち・が・う!!
「ウィル!!何をやってるの?」
「ん??キスだけど?」
「それは分かってます!!」
そんなことを聞きたいわけじゃないのに。
キスとか言わないで、恥ずかしい。
「お休みの挨拶のおかげで、随分キスになれたと思っていたが……」
「こんなの慣れるわけないです」
真っ赤になって抗議する愛来だがウィルは嬉しそうに目を細めるばかり。
これは何を言ってもダメな気がする。
全て受け流されてるし。
このままだとまたキスされそうだよね。
心臓もたないからやめてほしい。
話を変えないと。
「ウィル、私昨日どうしちゃったんだろう。急に体に力が入らなくなって……」
「魔力の使いすぎだ。ライデンから連絡を受けた時には肝が冷えたぞ」
ライデンから連絡を受けたのは夕方だった。愛来が魔力を使いすぎていると……。何度言っても治療をやめないため、急いで来て欲しいと言うことだった。
「愛来……。魔力は使いすぎると死ぬこともあるんだ。気をつけなければいけない。だから外で仕事するのは反対だったんだ」
「ごめんなさい」
しょんぼりする愛来の頭をウィルは優しくなでた。