癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。


 リミルにアロン?

 リミルは愛来の置かれている状況に目を見張り、ワナワナと震えだした。

「殿下、これはどういうことですか?あれほどベッドには入らないで下さいと言ってあったはずですよ」

 リミルは宙に手をかざすと木刀を取り出し振り上げた。

 リミルは地の魔法が得意で木の精霊による加護を受けている。そのため、どこからでも木刀を作り出すことが出来るらしい。

 木刀はウィルめがけて振り下ろされたが、ウィルの手によって受け止められ爆音ともに凄まじい風圧がかかる。

 リミルによる攻撃と、ウィルの防御は一瞬のことで、愛来が瞬きをした時には終わっていた。

「……」

 今なにがおきたの?

「リミル頭を冷やしなさい。ウィル殿下はともかく、愛来様にお怪我があったらどうするのですか?」

 動じた様子も無くアロンがしれっと主をディスる様な言葉を発したため、愛来はポカンとした顔で眺めていた。

 アロンさんてこんな感じだったけ?

「愛来様お怪我はありませんか?」

「はい。特には……」

 ポカンとアロンを見つめている愛来をウィルはギュッと抱きしめなが睨みつけた。

「お前ら、何しに来た」

 低く唸るような声がウィルの口から出るのと同時に大気がガタガタと揺れ出した。この揺れはウィルが起こしているのだということを最近知った。魔力の多いウィルは感情が外に漏れてしまうのだと……。しかし大人になり魔法騎士団で訓練を積み重ね、このように感情をコントロール出来なくなることは減ってきたのだが、愛来が関わってくると話は別だった。

 窓ガラスが今にも割れてしまうのではないかと言うほどガタガタと音をたてている。

 愛来はウィルを落ち着かせるためクルリと振り返るとサラサラと光り輝く金色の髪を優しくなでた。

「よしよし、ウィル落ち着いて」

 その途端大気の揺れはピタリとやんだ。

愛来のこの行動は犬などの動物にするそれなのだが、されているウィルは嬉しそうで、騒動を聞きつけやって来た騎士達の目は釘ズ家となった。

「すげえー」

「これが噂の懐柔技」

 悪魔王子とガギル・ドラコの懐柔技を目の当たりにした人々は尊敬の眼差しで愛来をみつめ、これがまた噂に尾ひれがついて城の外まで広がるのであった。











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