癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
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明日は私が元の世界に帰る日。
そして王様にお願いした一つ目のお願いを叶える日。
そのお願いとは……。
「あっ、ウィル!!こっち、こっち」
元気にウィルに手を振る愛来の元へウィルがやってくる。今日はウィルも私もお休みだ。そう、私の一つ目のお願いはウィルを独り占め……もといウィルを一日休みにしてもらい私と二人で過ごすこと。
「ルドーに乗って外に出ましょう。最近のウィルは少し仕事のし過ぎです。今日はラッキーなことに晴天ですからピクニックです。ほら、早くしないと天候が変わってしまうかもしれませんよ」
愛来とウィルはルドーにまたがり空高く飛んでいく。ルドーは青い空を気持ちよさそうに飛びながら駆けていくと、二人の頬を気持ちいい風が撫でていく。
「愛来あそこに降りるぞ」
愛来の視線の先には、キラキラと光る湖があった。湖の真ん中には小さな可愛いお城が建っている。
ルドーがふわりと地面に着地すると、全く衝撃がない、ほんとによくできたペガサスさんだ。
「愛来ここは王家の私有地なんだ一般人は近寄らないし、今日は城の者も誰も近づかないように話している。静かに二人で過ごそう」
「こんなにきれいな場所で過ごせるなんて嬉しいです。最近のウィルは働きすぎでしたから……今日はたっくさん笑いましょうね。笑うことは大切なんですよ」
愛来は思いっきり笑って見せるとウィルもつられたように笑う。
大丈夫、私は笑える。
今日だけは今日だけは笑顔て過ごすの。
きっと明日は泣いてしまうから……。
気が緩むとすぐに瞳に涙の幕が張ってしまう。愛来はくるりとウィルとは反対を向き、湖に向かった。
ここまでくれば潤んだ瞳には気づかれないはず。
「ウィル湖がとっても綺麗ですよ」
二人は楽しそうに笑い今日という日を過ごす。今日が……この時間がずっと続けばいいのにと思いながらも時間はどんどん過ぎていく。夕方になり湖面がオレンジ色に染まりだすと周りの景色も変わりだす。
「きれいですね。真っ白だったお城が今はオレンジ色でまるで違うお城のようです。時間が経つのって早い……ですね」
しまった。
涙が頬を伝って落ちていく。