癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
「そろそろ時間です。愛来様準備をお願いします」
愛来は頷くとウィルの前に立った。
これでお別れ……。
愛来はウィルの胸に抱き着いた、これが最後だからこの人を感じていたい。顔を上げるとウィルの唇が近づいてくる。
重なる唇。
最後の別れのキス。
ぎりぎりまで泣かないようにと思っていた。
最後は笑ってお別れすると皆には笑顔の私を覚えていてもらいたいから。
それでも我慢しきれなくなり、愛来の瞳から涙が零れ落ちていく。その涙は魔方陣の光を受けてキラキラと輝きながら落ちていった。
愛来は深呼吸で気持ちを落ち着かせると涙を堪えウィルからそっと体を離した。魔方陣の方へと向かっていくと大気が揺れ、ウィルの感情が漏れ出しているのがわかる。落ち着いてウィル……愛来は後ろを振り向くと眉を寄せながらも笑った。
魔方陣の中へ一歩踏み入れると光が強くなる。トレントの言われるままに愛来は魔方陣の真ん中まで行くと膝をつき祈るように両手を組んだ。一瞬瞳を閉じたがすぐに目を開ける。
最後の瞬間まであなたを見つめていたいから。鼻の奥がツンと痛くなるのを感じるが涙をこらえる。ここで泣いたらあの人がぼやけて見えなくなってしまうから。
魔方陣が発動し始めた。光がどんどん強くなっていく。
魔方陣の外でウィルが何かを言っている。
発動し始めた魔方陣は待ってはくれない、体がゆっくりと浮かび上がる。
私は叫んだこの世界で一番大切な人の名前を……。
私のことを忘れてほしいなんて嘘だ。
お願い。私の声だけでいいから忘れないで。
「ウィル……ウィル……ウィルーーーーーーーー!!!!!!!!」