癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
私が世界を救った?
でも……私はまだこの世界にいる。失敗ではないのか?
状況がまだわからない愛来は混乱しながらもウィルを見つめた。
ウィルは嬉しそうに、ん?と言いながらチュッとキスをしてくる。みんなの前ではやめてほしい。
「ウィーールーー」
怒りながら愛来はポコポコとウィルを叩き、状況説明をするよう訴えた。
「すまない愛来、今から説明する。しかしこれだけの人数がここにいては……場所を変えよう」
立ち上がろうとするウィルを愛来は制した。
「ちっ、ちょっと待って!!あの、着替えてからでもいいですか?」
「そうだな、愛来は三週間も眠っていたんだ、湯あみもしたいだろう。リミル手伝ってやってくれ」
ん?
んん?
ちょっと待って……三週間って言った?
驚愕の事実、私は三週間も眠りこけていた。
*
そらから私はみんなの集まっていた広間へとやって来たのだが……。
「……」
私はウィルの膝の上に座っていた。
それというのも三週間眠っていたせいで筋肉が衰えてしまったのか、魔力を使いすぎたせいなのか、足腰が立たずふらついてしまうのだ。何とかリミルに手伝ってもらい湯あみや着替えは済ませたが、歩くことができずにウィルにお姫様抱っこされここまで運んでもらい、そのまま膝の上に座らせられてしまったのだった。
皆の見る目が……。
いたたまれない。
涙目の愛来はウィルを見上げるが、ウィルは「くっ」と目を逸らしてくる。ウィルのこの行動がよくわからない愛来は何も言うことができずにいた。
そして思う。二人きりの時なら別にいいんだけど……二人きり。
愛来は思わず、湖上の城で二人できりで過ごした日のことを思い出してしまった。
最後の日だと思い、思いっきり甘えた。悲しみを除いたらとろけるような時間。
ひぇーー。
顔を真っ赤にして身もだえる愛来は再びウィルの胸に顔を埋めてイヤイヤをしていると、身長差のあるウィルが包み込むように愛来を抱きしめる。
完全に二人だけの世界だ。
そこに、「おっほん」というガルド王の咳払いが聞こえ、広間にいた人々の視線が王へと注がれた。
「そろそえろ本題に入ろう。魔法協会会長トレント説明を頼んだぞ」
「承知いたしました」
胸に手を当て頭を下げたトレントが立ち上がり皆に説明を始めた。