癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
あの日、魔方陣が発動を開始し体が浮き上がった瞬間愛来はウィルの名前を叫んでいた。ウィルは皆の制止を振り切って魔方陣へと近づくと魔方陣へと飛び込み愛来の腕を掴んだ。それと同時にウィルは大量の魔力を魔方陣に吸い取られた。それは愛来も同じでそのため三週間も眠ってしまったのだが、話はそこで終わらない。もう一人魔方陣の中に入った者がいた。
「もう一人……いや、人ではないから一匹と言ったほうが正解だな」
トレントの視線の先にはふよふよと気持ちよさそうに浮いているギルがいた。
ギルちゃん?
「私の見解はこうです」
トレントの言葉を聞き逃すまいと広間はシンと静まり返っていた。
「魔方陣は殿下、愛来様、ギル様の魔力を吸い取りそれを一気に放出した。そして異世界への扉は開かれました」
「ちょっと待ってください」
ここで口を挟んだのは愛来だ。
「でも私は元の世界に戻っていませんよ」
「そうです。しかし、異世界への扉は開かれ異世界へ行ったものがいる……それはギル様です」
え?
ギルちゃんが?
「ですがギルちゃんは今ここにいますよ?」
「そうなんです。そこです私が言いたいのは、なんとギル様は異世界を往復できる力があるのです」
「「「……」」」
「にわかには信じがたい話ではあるとは思いますが、これが事実です。あの日から私は庭園で調査を行っていたんです。そして一昨日魔方陣が発動したんですよ。私は目を疑いましたよ。そこに浮いていたのはギル様だったのですから……愛来様はこちらへ来るときギル様を見ていませんか?」
この世界に来た日?
「……」
そういえばあの日、神社で茅の輪くぐりをしてこの世界に落ちる時、白い靄のようなものが一緒に……。
「まさか、あれギルちゃんだったの!!」
またまた新事実である。
「ギルちゃん知ってて私に近づいて来たの?」
「キュィーー」
可愛く鳴くギルちゃん。
全ての元凶はお前かーーいぃぃぃーー!!
突っ込みを入れたいところだが愛来は言葉を飲み込んだ。聞きたいことがまだあったから。
「それなら、今後ファーディア・セレスティーと私のいた世界を行き来することができるということですか?」
「私もそう思ったのですがそれは無理そうですね。あの後、何度もギル様に魔方陣の発動をお願いしたのですがダメでした。ギル様は大変気まぐれですので……」