癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。


 ブチリッと血管が切れる音が聞こえたような気がした。その瞬間私はウィルの頬を思いっきり平手打ちしていた。

「ウィルのバカーー!!さいっってーー!!」






 愛来は自室のベッドの上でうつ伏せになっていた。

「ウィルのバカバカバカ」

 俺は気にしないって、まったくフォローになってないよ。その証拠にガルド王は口を開けっ放しになってたし、フィーナ王妃も額に手を当てて首を振っていた。


 もう嫌だ。

 子供に見えるんだろうな。

 ウィルだけじゃなく他の人達から見ても……私が子供に見えるのなら、私とウィルが並んだら不釣り合いだよね。そりゃあリビエラ様も怒るわよ。


 何でだろう。

 はぁーー。溜息が出る。

 その時控えめなノック音だ聞こえてきた。愛来が「どうぞ」と答える前に誰かが入ってくる。返事もなくここへ入ってこれるのは……ウィルだけ。

「その……愛来すまない」

 うつ伏せでいる愛来にはウィルの表情は窺い知れない。それでもどんな表情をしているのかはわかる。きっと泣きそうな顔をしているに違いない。

 そういえばこういう喧嘩?みたいなのは始めてだな。

 もう怒りも静まったし許してあげようか?

 でも、せっかくだから、もう少しだけ。

 起き上がった私は冷たく言い放つ。

「ウィル何しに来たんですか?」

 ウィルがビクリと肩を震わせた。なんだか可哀そうになってきた。

 怒ってないよって言っちゃおう。そう思ったときウィルが爆弾を落とした。

「愛来、その、俺が気にしないと言ったのは容姿のことではけしてない。俺は胸が小さくても大丈夫だ」

 ピキ……ピキピキ。

 愛来のこめかみに青筋が浮かぶ。

 宣言撤回じゃーーーーーーーー!!!!!!

 それは私の胸が小さいと言っているのといっしょじゃーーーー!!!!

「ウィルのばか!!」

 ぜんぜん可哀そうなんかじゃない。

 愛来は涙目で頬を膨らませた。怒る愛来にウィルは困惑しているように見える。

 ウィルが悪いのよ。

 乙女心わかってよ。

「ウィルのバカバカバカ!!だぃっき……」

 大嫌い?

 嫌い?

 私はこの人を嫌いになれるの?

 私が最後に呟いた言葉は……。



「…………すき」



 私がこの人を嫌いになれるはずがない。

 顔を上げるとそこには破顔したウィルの顔。

 キュンッと胸が絞めつけられる。

 その顔ずるい、反則だ。




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