癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。


 私の大好きな顔。

 愛来はウィルの首に腕を回すと抱きついた。

「今回だけは許してあげる……大好き」

「ぐはっ……」とウィルの口から聞いたことのない声が聞こえてきたが、気にしない。自分が恥ずかしいことを言った自覚がある。

 恥ずかしいから、ウィルに抱きついたまま顔を上げないでおく。

 するとウィルは愛来の頭を優しく撫で、耳元で囁いてくる。

「許してくれるのか?ありがとう。俺も好きだよ」

 耳元で囁く声に愛来の体は震えてしまう。

 ウィルに「可愛い愛来」「好きだ」「愛してる」沢山の愛を囁かれてはさっきまでの怒りは何処へやらだった。



 *



 その夜、晩餐会が開かれた。

 そこにいたのはリビエラと同じ燃えるような赤毛に金の瞳の男性だった。男性は紳士然としたした振る舞いで愛来に頭を下げてくる。

「愛来様この度は娘が大変失礼いたしました。私はリビエラの父でアシュロウ・ドル・リストナと申します」

「リビエラ様とは本日会ったばかりですが、とても仲良くさせていただいています。あっ私は井上愛来です」

「なか、よく、ですか?」

 目を見開きながら驚くリストナ公爵に何故か違和感を覚える。

 どうしたのかしら?

「いえ、その……うちの娘は気性が激しくて、同じ年頃の友達もおらず、大人の女性も逃げ出すのですが……」

「そうなのですか?私はとても素直で可愛らしいと思いますが?それに短い時間でしたが先ほどお話しをさせていただいて、リビエラ様の好きな物も分かっちゃいましたよ」


「……」


 そこで大きな声を上げたのはリビエラだった。

「あなたがわたくしの何を知っていると言いますの?」

 あれ?リビエラ様いつの間に来たのかしら?私がここに来た時にはいらっしゃらなかったはず。

「リビエラ遅れてきて何て言いぐさだい。挨拶はどうしたんだい」

 親としてのマナーを子に教えようと淡々と話を進めていく。

 親に怒られシュンッと肩をすくめるリビエラは年相応に見える。





 何とか挨拶がすみ晩餐が開始した。

 終始愛来はリビエラに睨まれている。

 どうしたものかと悩んでいると、どこからともなくギルがふわふわと飛んできた。でかしたギルちゃんそのままリビエラ様の元へ……。

 よし!!

 ギルはリビエラの膝の上に飛んでいった。

 空気の読めない子だと思っていたのに!!実は空気の読める子だったのね!!

 えらいぞギルちゃん!!

 その後は終始ご満悦のリビエラ様の姿に愛来はホッと胸を撫で下ろした。







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