癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
根性でハッピーエンド
本日雲一つ無い青空の下、愛来とウィルの結婚式が執り行われる。本来なら婚約式から結婚式へと進むのだが、ファーディア・セレスティーの危機があったことで婚約式が中止となり、国民がとてもがっかりしていた。この世界を救ってくれた聖女様に幸せになってもらいたいと皆が願っていたのだ。そのためガルド王は王の権限で婚約式をすっとばしてしまった。
愛来はさすがにまずいのではと、困惑したが王が良いと言っている。と言われれば何も言えなかった。
リミルがいそいそと愛来の回りを動き回り、結婚式の身支度を手伝ってくれている。他の侍女さん達もずっと動きっぱなしだ。
「愛来様準備が整いましたよ」
リミルがそう言って姿見鏡を持ってきてくれた。そこに映っていたのは紛れもなく愛来本人なのだが別人の様に見えた。上質な真っ白なドレスに細かい刺繍の花々が咲き誇っている。頭に付けるのは派手すぎないシンプルなティアとベール。
「すごいリミル別人みたいです」
「とても美しいです。殿下も惚れ直しちゃいますよ」
そう言ってリミルが愛来に向かってウインクしてきた。
「大変時間がありません、急ぎましょう」
転ばないようリミルに手を引かれ定位置に着くと、ラドーナがやって来た。バージンロードを歩く役を引き受けてくれたのだ。
ラドーナはウエディングドレス姿の愛来を見つめ、目を細めて喜んだ。
「この場に宗次郎がいたらどんなに喜んだことか。わしは今日から愛来の本当のおじいちゃんだ。幸せにおなり」
天涯孤独だった自分に家族が出来る。
愛来の目に涙が溜まっていく。それを見たラドーナがあわててハンカチを取り出した。
「愛来、リミルに怒られるから泣かないでおくれ」
リミルに怒られる?
元国王様が?
リミルが元国王様であるラドーナを叱りつけている様子を想像して愛来はプッと吹き出した。涙も引っ込み緊張が解けたところで教会の扉が開き、パイプオルガンの音が鳴り響いてきた。異世界の結婚式も愛来の住む世界と結婚式はほぼ同じだ。ラドーナと共に長いバージンロードをゆっくりと進んでいくと、そこに待っていたのは上下白の布地に金のボタン、金の刺繍が見事に施されたジュストコール姿のウィルが立っていた。
王子様!!
いや、そうなんだけど、やばいクラクラする。
金の髪はサラサラでとろけるような笑顔でこっちを見てる。
いつもは軍服を模した服装が多かったから、ジュストコール最高!!愛来は心の中で叫んだ。
ラドーナはウィルの前で愛来を引き渡す。
「やっと手に入れた。俺の花嫁」
ウィルが愛来の手をとり囁いた。