癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
*
ピピッピッチュッピッチュッ……。
んん……?鳥の声?聞き慣れたすずめのさえずりとは違う鳥の声。
何でだろう体がだるいし、起き上がりたくない。
もぞもぞと温かい布団の中に丸くなろうとして体が動かないことに気がついた。
何これ金縛り!!
愛来は目を開き、金縛りの解除を試みた。すると首は動く。
動かないのは体だけ?
え?
目を見開いた愛来の視線の先に……朝日に照らされてキラキラ光る金色の何か。
うっ……ウィル!!
なななっ何でウィルが一緒に寝てるの?
これ、どういう状況?
カオス!!
最近この言葉を心の中で叫ぶことが多くなっている気がする。
それにしても何て綺麗なの。おとぎ話に出てくる王子様というより、お姫様みたい。キラキラ輝く金色の髪はサラサラで肌も艶々、左右対称にある顔のパーツたち。人とは思えない美しさに愛来が見惚れていると翡翠色の瞳がそっと開いた。その瞳は寝ぼけているいるのか視点が定まらない。
わーー。綺麗な翡翠色。宝石みたい。
その時何故か心臓がドクンッと跳ね、愛来はボーッとその瞳を見つめることしかできずにいると、女性の様に赤く柔らかい唇が愛来の額に触れた。
ひゃーーーー!!!!
なっななな何ーー!!
愛来の意識は一気に現実へと戻され、体からドバッと汗が噴き出し、体の体温が急上昇していく。
あたふたする愛来をウィルはギュッと抱きしめると愛おしそうに頭をなでた。
「やっと起きたか。丸二日眠っていたんだぞ。良かった、本当に良かった」
ウィルのその言葉は愛来のことを本当に心配しているのだということが伝わってきて、愛来の瞳に涙の膜を張った。
それにしても二日も眠るなんて、さすがにやばくない?
こんなに寝たのにまだ体がだるいなんて……。
それに心配してくれる人がいるってありがたい。
「ウィルありがとうございます。心配をかけてしまいました。体は少しだるいですが元気ですよ」
「そうか、体がだるいのは魔法を使った反動だろう。休めば良くなると思うが、俺が治してやろう」
そう言ったウィルがパチンと指を鳴らすと愛来の体に光の膜がかかり、体がぽかぽかと温かくなっていく。時間にして5秒ほどで光は消えてしまったが、愛来は体の変化に驚いた。
すごい!!回復魔法?体の奥から力がみなぎってくるみたい。
「ウィルすごいです。元気いっぱいです」
そう言って愛来は、はたと思った。
回復魔法が使えるのなら何故ウィルあんなにひどい肩こりの状態になるまで放っておいたのか?
「ウィル、こんなにすごい回復魔法が使えるなら自分に使えば良かったんじゃないですか?」
「ああ、この魔法は自分には使用できない。それに回復魔法という物は存在しない。治癒魔法もだ。体にできたた傷や病を治す魔法は無いんだ。俺が今使ったのは体の気の力を活性化したにすぎない」
なるほど、魔法でも出来ないことがあるのね。
「二日も眠っていたんだお腹が空いただろう。リミルに朝ご飯を用意させよう」
リミルさん?
ウィルがパチンッと指を鳴らすと、すぐに扉を叩く音が聞こえてきた。