君の音に近づきたい


――とは、思ってみたものの。

高校1年15歳。何の経験もない私は、何をどうすればいいのかさえ分からない。
すぐに経験値を積むわけにも行かない。

タンゴの大人な「妖艶さ?」みたいなものだって、なんとなくでしか分からないし。

家に帰って、お父さんとお母さんの寝室に忍び込む。

確か、お母さんの趣味は恋愛小説やマンガを読むことだった。
子供には見せられないと、隠し持っているはずだ。
寝室にある本棚に目を滑らせる。
お父さんのエリアの難しそうな本と違って、お母さんの棚はなんだか怪しげな雰囲気ぷんぷんだ。

文字より視覚から入った方が、イメージが湧くかも。

そうは言っても高校生だ。大人の恋がどんなことをするかくらいは理解している。

適当に一冊を手に取り、開いてみる。

わわわ、何これ――!

すぐに閉じた。
でも、怖いもの見たさにもう一度開いてしまう。

「春華―! ご飯だよー。下りといでー」

お母さんの声に肩がびくつく。

「は、はーい。今行く―」

素早くその漫画本を後ろ手に持って、寝室を出た。


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