やわらかな檻
例年のように慧へ花束を届けることもそりゃあ可能よ、でも何のために花を贈っていたのかを考えると……ね。
少なくとも慧の傍には散らない花が一輪いるわけだし。
二人して黙り込むと元々物音が極端に少ない家が更に静かになり、小さな声でも残らず拾えるようになる。
ふと隣の部屋からビリビリと何か――おそらく包装紙を裂く音――が聞こえ、甥の硬かった表情が一気に和らんだ。
「そうだね」と呟く。
「もう、花は要らない」
そして勢い良く開いた襖の先に、頬を赤く染めた小夜さんが一人。
◇
「きっと私、小母さまに渡さない方が後悔します。
渡す予定だった人には明日の分を取り置きしますし、事情を理解してくれないほど大人気ない人物じゃありませんから。ただ花を大切にして下されば、それで」
「じゃあ伝えておくわ。小夜さんの大切な人への思いがこもってるのね?」
「……はい、困ったことに」
【育てられた花/終】
少なくとも慧の傍には散らない花が一輪いるわけだし。
二人して黙り込むと元々物音が極端に少ない家が更に静かになり、小さな声でも残らず拾えるようになる。
ふと隣の部屋からビリビリと何か――おそらく包装紙を裂く音――が聞こえ、甥の硬かった表情が一気に和らんだ。
「そうだね」と呟く。
「もう、花は要らない」
そして勢い良く開いた襖の先に、頬を赤く染めた小夜さんが一人。
◇
「きっと私、小母さまに渡さない方が後悔します。
渡す予定だった人には明日の分を取り置きしますし、事情を理解してくれないほど大人気ない人物じゃありませんから。ただ花を大切にして下されば、それで」
「じゃあ伝えておくわ。小夜さんの大切な人への思いがこもってるのね?」
「……はい、困ったことに」
【育てられた花/終】