やわらかな檻
 水車やら錦鯉のいる池やらを見てはしゃぐ彼女に付き合った後、部屋に帰ってきてどっと疲れたことは記憶に新しい。

 日頃から全く運動をしない自分にはあれだけでもきつかった。

 それでも元気いっぱいだった彼女が、今日は暑いから嫌だと言う矛盾。


「……そう」
「うん。ここは涼しいから好き」


 上体を伸ばし、エアコンで冷えているのだろう肘掛けの部分に少し日焼けした頬を寄せる。

 まどろむように目を閉じて言う様子は愛玩用の猫のようだ。

 猫だから、思わず撫でてしまったっておかしくないはずだ。
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