やわらかな檻
 黒曜石に似た目が爛々と輝いていた。


「……お祭りに行きたいの」
「すみません。親御さんと行って下さい」
「夏休みには避暑に行くの。一緒じゃなくちゃいやよ、来て」


 どんなに楽しいだろう。
 ここから出てお祭りに行けたら。
 どんなに充実するだろう。
 ここでない場所で休暇を過ごせたら。

 ふ、と口の端を緩めた。

 僕が何も言ってこないのを彼女はその回転の速い頭で正しく受け止めたらしく、みるみるうちに目に宿っていた光が失われ、唇を噛んで俯く。

 三角座りにした足を腕で抱きかかえ、ひざこぞうに顎を乗せる。
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