幼恋。
どれくらいの時間が経ったか、ちらりと時計を見ると夜中の12時を回っていた。
そろそろ俺も寝に戻ろうかと思い始めた頃
おりははぽつりぽつりと話し始めた。
「亜美さんが本当のお母さんらしい…。
前取った戸籍抄本も見せてもらった…。」
「そうか」
「お母さんには凄く感謝してる。今でも好きだよ。
でも、亜美さんから聞いたこととか、今まで私にはその事実を隠されてたこととかすごく悲しくて悔しくて…」
「亜美ってやつからはなんて説明されたんだよ」
「お父さんが亜美さんに暴力してて、私連れて離婚したら殺すって言われて私を置いて離婚したって」
そういうおりはの毛布を取って顔を見ると、そこには見た事ない表情があった。
絶望悲しみ憎しみ。
どれとも取れないような不穏な表情。
「はぁ…。俺も知らなかったけどよ、叶と椎が言ってたのは違ったぞ」
「なに…?」
「亜美は面倒見なくて、椎に全部任せ切りで見ないまま結局お前もいらないって離婚したってな。
面倒見てなかったから俺もおりはも覚えてないんだろうよ、と。」
どっちが正しいかなんて事実も知らない俺はどうしようもないが、俺は見ず知らずのぽっと出の女より椎や叶を信じるな。