幼恋。
「おりはは好きな人いないの?」
目が合った架子ちゃんは、私と叶ちゃんの話が聞こえていたのかそう訪ねてきた。
好きな人、か…。
こういう話したことないからなんだか嬉しいなぁ。
「私は今までいたことないんだ…。
憧れはあるんだけどいまいち恋ってよくわからなくて」
それに、中学のとき1度告白されたことがあったけどその子が何故か次の日から椛たちのグループに虐められるようになって
私に関わると虐められるとレッテルが貼られてからは男女問わず話しかけてくる人はいなくなったから。
まぁ、そんな暗いこと言えないけどね。
私の言葉を聞いた架子ちゃんと旬佑先輩は、驚いたように目を見張る。
「えー!てっきり王子のこと好きなんだと思ってた!」
「王子??」
架子ちゃんの驚きに戸惑いつつも、王子が誰のことかわからずに首を傾げた。
「そう、叶先輩!
優しくてイケメンでまるで王子だって噂だよ〜?」
「そ、そうだったんだ」
「ついでに言うと、弟の方は悪魔だってね」
「悪魔…」
叶ちゃんが王子で椛が悪魔…か。
そんな噂があるなんてのも知らない自分がなんだか無力に感じた。
叶ちゃんが王子なのは凄くわかる。
本当に優しくて可愛いから。
でも椛が悪魔なんてのは少し悲しいな…。
「まぁ、木下くんも1部の過激なファンからは人気だから女遊びは絶えないって言われてるけどね」
「女遊び…」
女遊びがどういうことなのかはよく分からないけど、よく女の子と遊んでるってことだよね。
なんて、なんとも言えない気持ちになっていると、叶ちゃんが口を開いた。
「あ、ねぇおりちゃん!
もし良かったらコーヒー牛乳買ってきてくれない?
僕まだ食べるの時間かかりそうで…」
「わかった!
買ってくるからゆっくり食べててね」
そう、申し訳なさそうに眉下げて叶ちゃんがお願いしてきた。
叶ちゃんが何かを頼んでくるなんて珍しいな。
そんなにコーヒー牛乳飲みたかったんだなぁ。
なんて思いながら、私は急いで自販機のある購買の方へと走り出した。