幼恋。
【椛side】
放課後
あれからずっとおりはが教室に戻ってくることもなく、俺は保健室に向かうとすやすやとまだベッドで眠っていた。
「おりは」
俺は今までずっとおりはを守ってきたつもりだった。
でも結局守りきれなくて、叶に任せることになって。
こんな最低な自分を殺したいくらい何度も何度も自分を呪った。
それに音と付き合ったのもそんなにクズな俺が少しでも許されたいとか思ってるからもっと最低だ。
苦しそうに眠っているおりはの頭を撫でると、少しだけ苦しそうな表情が和らぐ。
「おりはごめんな」
本当はずっとずっと傍で支えていたい。守っていたい。
付き合えた時は本当に嬉しくてこのまま二度と話さないと思ってた。
そんなことを思い返すと自分の目から涙が溢れそうになってそっと目を閉じた。
「あほらし」
何度憎んでも悔やんでも事実は変わらないんだからと俺は一人で笑った。
俺が出て行こうかと立ち上がった時ガラッと音を立てて保健室に入ってきたのは松村。
「悲しそうだね木下くん」
「別に」
松村はニヤニヤと笑いながら俺に近づいてくる。
こいつはおりはのこと好きで、でも俺と付き合ってからは潔く身を引いた意外と良い奴だ。
しかも身を引く時俺に幸せにと笑ってくれたし。
おりはを取り合ってる時はムカつくやつだったが、なんだかんだいちばん男らしいやつだよな。