幼恋。




そうは思っても松村本人に言うわけもない俺は出ていこうと歩き出すと、松村から腕を掴まれる。





「ねぇ、どうしておりはちゃん手放したの?」






松村は真剣な顔でそう言ってきた。


どうしても何も…。






「俺は俺が許せない。おりはを守れなかった自分が。」



「だからって、別れたらもっと酷くない?
何があっても守るとか出来なかったのか?」



「……そんなの考えたさ。
でも、少しでもおりはの苦しみを軽くしたかった」






きっと俺を見るとあの時の光景をより思い出すきっかけになるから。




それがそう言うと、松村はクスッと笑って俺の腕を強く握る。






「それ、自分が楽になりたいだけじゃん」



「は?」



「自分じゃ守れない、未熟だってわかって放り投げただけじゃん。
おりはのためとか何とかいって、似た境遇の子彼女にして罪償うフリして逃げてるだけ」






松村のそんな言葉に俺は言葉が出なかった。



言い返すなんてできない。
だってこいつの言うことは正しいから。




俺が何も言えず松村を見ていると、またしてもガラッと保健室のドアが開いて架子と今は大学生のはずだが叶と旬佑が現れた。






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