幼恋。
【叶side】
苦しそうに息をするおりちゃんを支えながら帰ると、家には奇跡的に椎がいた。
「おりはっ」
「ごめんなさい…ごめんなさい……」
あれからただひたすら謝り続けるおりちゃんはリビングに蹲ってしまう。
おりちゃんがどんなタイミングで事件のことを思い出すかは分からなくて僕達もすごく注意を払ってるつもりなのに今日は外で思い出しちゃったみたい。
どうも、椛が音羽ちゃんと付き合ってるのを知ってから思い出す頻度があがってるんだよね…。
「おりは、落ち着いて深呼吸してこれ飲んで」
椎はおりちゃんの背中を撫でながら薬を手渡す。
精神的に不安定なおりちゃんは事件の後からずっと薬を飲んでいるからそれだろう。
薬を飲んだおりちゃんは少し落ち着いたのか汗がだいぶん引いていくのを感じる。
そしてそのまま疲れたようにコロンと寝てしまった。
「ごめんな叶、ありがとう」
僕はただ無力で何も出来なかったのに俺をを言われる筋合いはない。
そんなことを思いながらも椎がおりちゃんを自分の部屋に寝かせに行くのも黙って見届けるしかできなかった。