幼恋。
独り
【おりはside】
お父さんお母さんとのわだかまりも解消して約1ヶ月。11月。
文化祭当日。
私たちのクラスは念願の喫茶店で大盛り上がり。
だけど、私は体調とか考慮して午前の調理係で接客の架子ちゃんと松村くんとは離れてしまった。
「はー…」
叶ちゃんもいない今、午後からの自由行動は私はひとりぼっちで寂しい。
椛と有澤くんは多分どこかでサボってるんだろうし。
「お腹空いたなぁ」
ひとりぼっちでもお腹はすくもので、屋台でしてるポテトを食べながら花壇の近くのベンチに腰掛ける。
「いい天気…」
いつぶりに空を見上げたか…なんて考えてポテトを口に運んでいると…。
「おりはちゃん」
そう、聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。
私は恐怖で震える体を何とか動かして、話しかけてきた隣の人を見ると帽子とメガネをかけたおじさんが座っていた。
「お待たせ、今度こそ一生一緒だよ」
「っ…」
そのおじさんは、あの事件のおじさんだった。
その瞬間溢れ出る冷や汗と震え。
あの時の記憶がよみがえって声が出ない。