幼恋。
「椛くん、ありがとう」
俺に背を向けたままそう言った音の声は震えてて、俺は何も言えなかった。
悪かった、なんて言葉は陳腐で
感謝の言葉も違う気がして。
「じゃあな音」
音のくれた俺に助けられたという言葉のおかげでおりはをもっと助けたいという気持ちになった俺は
謝罪でも感謝でもいいわけでもなくそう言っていた。
俺のおりは以外どうでもよかった世界に
音は少なからず存在していて
きっと音はこれからいい出会いに恵まれる。
なんて根拠はないがそんな未来を容易に想像できる良い奴で出会ったことに後悔はない。
ありがとう。
もう一度言われた感謝を俺も背中で受け止めて何も言わず帰った。