幼恋。
あ、怒られる。殴られる。
椛の険しい顔からそう思った私が少し身構えると、予想とは違ってギュッと抱きしめられた。
「椛?」
「俺の、女。」
抱きしめられてるから椛の表情は見えないが、そう言って笑う椛に松村くんの笑い声が帰ってくる。
「なーんだ、やっぱり付き合ってるじゃん」
「はぁ?付き合ってねぇけど。
こいつは俺のペットみたいなもんだよ」
「へぇ〜」
松村くんの面白がるような声の後、椛はようやく私を離してくれる。
その顔はいつものクールな顔でさっきのは何だったのかと思った。
「面白いねぇ君たち」
「見せもんじゃねぇぞ」
「あはは、そう警戒しないでよ
俺もおりはちゃんを彼女のひとりに入れたいとか思っただけだから」
そう言って笑う松村くんと、無表情のままそれをみる椛がなんか気まずい空気でどうしたものか…。
「と、とりあえず!
早く作業しよう!ほら、椛も手伝ってくれる?」
「無理」
この空気をどうにかすべく、私が話題を変えて椛に聞くも、椛はキッパリと断ってそそくさと教室から出ていってしまった。
相変わらずですな、椛は。
「さぁ、やろうかね〜」
呑気な松村くんはヘラヘラと笑いながら作業を始めるのだった。