幼恋。
架子ちゃんは口元は笑ってるけど、目は晴れて赤くなって明らかに元気がない。
「架子ちゃん…」
「あは、別れてきた〜」
そう言って笑う架子ちゃんが痛々しくて、私はなんて返していいか分からない。
そんな私と架子ちゃんを見ていた松村くんは眉を八の字に頭を下げた。
「知らない方が幸せだったよね、なんかごめんね」
悲しそうな姿に良心が痛んだのか、自分が良かれと思って教えたことを悔いたように謝った松村くんに架子ちゃんは首を横に振って
大丈夫と言うけど大丈夫そうには見えない。
「さ、文化祭準備しなきゃ!委員だからしっかりしないと」
架子ちゃんはそう言ってから元気で写真へと手を伸ばしたけど
その手を椛が掴んでとめた。
「お前帰れ。
委員のくせにそんな顔で準備されても文化祭楽しくねぇよ」
「そんな…」
椛の思わぬ言葉にその場にいるみんなが凍りついて、架子ちゃんの目にはうっすら涙が浮かぶ。
そして架子ちゃんは涙を貯めながら無理して笑って立ち上がった。
「ごめんね、そうだよね」
「胡散臭い顔が治らないなら来るな。
委員の仕事はおりはがやるからいい」
椛のその言葉に、涙を目に貯めた架子ちゃんは言葉を発することなく教室から出ていってしまった。