入れ替わったら彼の愛情をつきつけられました。
『同居人』という呼び方がなんだか白々しく感じられて、苛立ちを感じる。


彼女はそんな美緒の気持ちなんて微塵にも気が付かない様子で、美緒に並んで歩き出したのだ。


奇妙な空気が流れているが、それに気が付いているのはきっと美緒だけだ。


「エレベーターを使わないんですか?」


沈黙が嫌で美緒は仕方なくそう尋ねた。


「私は部外者ですから、エレベーターを使うのは申し訳ないので」


その返答に美緒はうなづく。


確かにこの会社には来客用のエレベーターはない。


それを知っていて気遣いができる人なんだろう。


いいことなのに、そんなところまで嫉妬をしている自分がいる。
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