入れ替わったら彼の愛情をつきつけられました。
「陽菜? 体調はもう大丈夫?」


帰宅してきた大河が夕飯の匂いをかぎつけて、ただいまも言わずにそう聞いてきた。


白いエプロンをした美緒が振り向き「おかえりなさい」と笑顔を向ける。


コンロには大きめの鍋がセットされ、今パスタを茹ではじめたところだった。


「ただいま」


返事をして美緒に近づき、おでこに自分のおでこをくっつける。


「熱はないみたいだね」


ホッとして言う大河に、美緒は笑ってしまいそうになる。


本当に、どこまでも陽菜に甘い人のようだ。


「もうすぐご飯できるから、着替えて待ってて」


「あぁ」


頷いて寝室へ向かう大河の背中を見つめる。


この関係も、きっと今日で終わり。


ううん。


終わりにするんだ……。
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