天然お嬢と双子の番犬さん
「あかんなぁ…ほんまに欲しなってもうた」
「ん、何か言った?」
にこり。
彼が笑った。
まるで聞かなくてもいいと言われてたような気がした。
「花は好きな奴はおるん?」
「好きな人?いるよ!和も湊もパパも五十嵐組みんな大好きだよ!」
「──要はおらんって事でええな?」
え!今言ったよね!?
聞こえてなかった!?
「だから、私は…!」
頬を撫でる彼の右手が顎に移動した。顔を持ち上げられて、更に距離を近く感じる。
「はるひこく、」
「五秒だけでええ、目瞑ってくれへん?」
ゴミか何か付いてたのかな。目が開いてると取りずらいもんね。ここは好意に甘えて…。
静かに瞼を閉じた。
「……ッ、簡単に流されんなや」
ボソッと聞こえた声が気になって片目だけ開けて驚いた。
唇が触れてしまうぐらい距離が近かったから──。