天然お嬢と双子の番犬さん

「あかんなぁ…ほんまに欲しなってもうた」


「ん、何か言った?」



にこり。
彼が笑った。

まるで聞かなくてもいいと言われてたような気がした。




「花は好きな奴はおるん?」


「好きな人?いるよ!和も湊もパパも五十嵐組みんな大好きだよ!」


「──要はおらんって事でええな?」




え!今言ったよね!?
聞こえてなかった!?



「だから、私は…!」



頬を撫でる彼の右手が顎に移動した。顔を持ち上げられて、更に距離を近く感じる。




「はるひこく、」

「五秒だけでええ、目瞑ってくれへん?」




ゴミか何か付いてたのかな。目が開いてると取りずらいもんね。ここは好意に甘えて…。


静かに瞼を閉じた。




「……ッ、簡単に流されんなや」




ボソッと聞こえた声が気になって片目だけ開けて驚いた。


唇が触れてしまうぐらい距離が近かったから──。


< 101 / 534 >

この作品をシェア

pagetop