天然お嬢と双子の番犬さん
「そいつに何を言った」
湊の声が耳に掛かる。
「な、にも…」
特に思い当たる節は無い。世間話をしたぐらいだったと思う。
和の指が私の下唇をなぞった。
「かっこいいとか言った?」
「え?…あっ、」
言った。
「で、でも…」
”和と湊もかっこいい。”そう言おうとしてたけど言葉に詰まる。さっきの怖いと思った感情が何だったのか、何となく本能で分かった気がする。
───喰われてしまう、
「ッ…、」
逃げようとした。
危ないと思ったから。
だけど和に掴まれた両手首と湊に回された手は簡単には振り解けない。
「簡単にそんな事言うな」
「ようやく僕達だけになったのに敵増やすなよ」
待って。怖いよ二人共。
「怒ってる、の?ごめんね。怒らないで」
きっとこれは怒ってるわけじゃないと思う。別の感情なのかもしれない…でも何か言わなきゃって思ったから。
「…怒ってねぇよ」
「うにゃッ!?」
湊に耳を噛まれた。
痛くはない、でも突然で吃驚。
和が笑う。目は細めただけで笑ってない。
「ああ…もういっその事…、」
私の首筋を縦に指でなぞる。