天然お嬢と双子の番犬さん
三章
やくそく
さらり。
春風が頬を掠め、髪が靡く。
この頃の髪は長かったかな。
風が吹く度に大きく揺れるから。
中学生になったばかりの私は、新品のセーラー服の袖で涙を拭っていた。これじゃあ入学前に汚れてしまう。
でも仕方がないよ。だって勝手に涙が出て来るから。どうしようもないの。
「──お嬢、泣かないで」
茶髪の彼はそう言って頭を撫でてくれた。
だって私を置いて行っちゃうんでしょ?
「大丈夫。すぐ戻ってくるから」
「ぐすっ…、いつなの?」
「うーん、三年ぐらい?」
「長いよ…行かないで…」