天然お嬢と双子の番犬さん
口元が一瞬だけ緩んだように見えたと思ったら、和が私の体を抱き寄せた。
ふわり。
香水と和の匂い。
凄く安心する。
「うん、分かった。お嬢の傍にいる。お嬢がそこまで言うなら…ずっと傍にいるよ。ずーっと、ね」
「…ほんと?」
「約束する」
湊の手が私の頭を撫でてくれる。
大きくて暖かくて優しい手。
和の背中に手を回して湊の手も握った。ぎゅっと強く。
「お嬢、」
湊が言った。
「昨日の事覚えてるか」
誘拐された時の事だろうか。
「和と湊が来てくれたのは覚えてる…けど」
ぼんやり。かすかに残る記憶。
だけどハッキリとはしてない。
「ごめんね。よく覚えて無いんだ…私、二人に酷い事しなかったかな?」
そう言った後、ふと二人の唇が気になった。どうしてかは分からない。ただ少し気になって顔を赤らめてしまった。
和と湊は目を細め口を開いた。
「何もないよ」
「何もねぇよ」
そっか…良かった。
安堵の溜息を吐く。
和と湊は微かに口角が上がっていた。まるで私の言葉に安堵したかのような、溜息を吐きながら。