天然お嬢と双子の番犬さん
「最初はお嬢の好きな甘い物で釣るつもりだったらしいよ。移動販売車か何かでね。寄ってきた所を拉致するつもりだったんだと」
「それが失敗…で。
あの騒ぎを起こしたってのか?」
「催涙ガスをばら撒いて、パニックに生じてお嬢を拉致。その計画が上手く行ったって所。
イタリアに拉致すれば結婚、なんて文化無かったと思ったんだけど。
…屑は何考えてるか分からないね」
笑ってる。しかし目は一点を見ていた。
言葉一つ一つに殺気が入り混じり、花の言う王子様な彼の面影はない。
「その怒り任せで、俺に断りもなくルーフスを全滅させたと?
随分偉くなったじゃねぇか。
あいつ等には生き地獄を味わわせる予定だったんだ。
船に乗せるだけじゃ気が済まねぇ…一瞬たりとも油断出来ねぇ仕事を用意してたんだ。
勝手に死ぬことも出来ねぇ、ミスっても医療を駆使して意地でも生かして、死ぬまでこき使わせる予定だった。それを無駄にしやがって」
同業種の人間でも怯えてしまうほどの殺気と重い、重たすぎる張り詰めた空気。
ただ相手はチャイナマフィア最高峰と言われる、イーランのボス。