天然お嬢と双子の番犬さん
煙を吸い口の中に溜め、ふぅと息を吐く。灰色の煙が充満する。
「仕方ねぇな。誰かに買って来させる…」
「──親父」
よいしょ、と腰をあげようとした時だった。
留華が呼び止めた。
目が据わっている。
「あの二人はどうしてまだあの立ち位置にいるんだ?」
低い声だった。
「あ゛?あいつ等を若頭から降ろせってか?
何言ってんだ。五十嵐組がぶっちぎりトップなのはあいつ等がいるからだろーが。トップ争いの立ち位置じゃねぇ、この地位に立てたのはあいつ等のお陰でもあんだ。
そう簡単に降ろしちゃ、下が黙っちゃいねぇよ」
「それについては何も言わない。それが事実だからね。俺でも出来なかったことを容易にしてやったのはあいつ等だ。
…でも、違う。
俺が言っているのは、お嬢を危険な目に合わせたあの二人を、どうしてまだ傍に置いてんだって聞いてんだよ」