天然お嬢と双子の番犬さん
留華は悩んでいたが、ゆっくり口を開いた。
「東雲兄弟にも念書を書かせたのか」
竜二は何も言わずただ頷いた。
「それを破らないと言えるのか?俺はあいつ等に託すのは間違っていると思ってる」
「仮にも舎弟だった奴等に、言う事じゃねぇだろ〜。
ああ、そういやお前。花にあの二人付けたって言ったら唯一反対してた奴だったよなぁ。
喧嘩でもしたか?そういや、前からよく喧嘩してたよなぁ、ちゃんと仲直りしとけよ。花が悲しむぞ~」
「親父!!」
留華はふざけるなと声を上げた。
煙草の匂いが10畳ほどの部屋を漂う。いるのは留華と竜二の二人だけ。広すぎるそこで真剣な表情になった竜二が小さく口を開いた。
「花は千夏にそっくりだ。優しく、素直で可愛くて──、
ソイツが欲しい言葉、どんな言葉も迷わず口にする。だから花は好かれる。男女問わず…異様なまでにな。
だから念書を書かせる必要がある」
「知ってる。でも俺はそんな感情は…、」
「無いはずがねぇよな?
その後どうなるかも…分からねぇはずがないだろ?お前が」
「っっ、」
視線を逸らす留華を横目に、透明ガラスの灰皿に葉巻を擦り潰した。