天然お嬢と双子の番犬さん
「本当、いい加減にしてほしいね」
ドアの前に居たのは、二人を睨む留華だった。
険しい顔つきで顎をしゃくる。
「その手を離せ」
留華の殺気に思わず震えてしまった。…五十嵐組の若頭だった頃よりも怖い気がする。
中々離さない和に痺れを切らしたのか、和の肩に手を乗せた。
「もう一度言う…離せ」
「ッ…、」
骨のきしむ音が私まで聞こえてくる。かなり痛かったのか、ゆっくりと手を離していく。
それを確認した留華が私に「もう大丈夫」とだけ言うと、腕を引かれ抱えられた。
「みんな待ってるよ。戻ろう」
「待っ…」
話を聞かずに歩き出すが──、止まる。
「み、なと?」
手首を掴まれた。
強く握られていて解けない。
留華が小さく舌打ちをする。
「る、か!?」
視界が真っ暗闇になる。
塞ぐのは留華の手だ。
「何も見なくていい。俺だけに集中して」
耳元で囁かれ、背中がぞわりとした。