天然お嬢と双子の番犬さん
ピチャ…、
止めたはずの蛇口から落ちた水の音が静かな洗面所に響いた。
…パパに後で言われそうだなぁ。
泣いたってバレちゃうかも。
タオルで顔を拭きながら鏡の中の自分を見る。泣いたんだと分かる顔だ。
パチンと両頬を叩き元気注入。
鏡の前で真剣な顔をしてみたり、微笑んでみたりを繰り返す。
…うん。
気合十分。気持ちは晴れないけど…大丈夫。
深呼吸をした後で廊下に出た。だけど待っていると言っていた留華がいない。
……る、か?
───変な音がした。
私には聞き慣れた、あの鈍い音が。
慌ててその音の方に向かう。
廊下の突き当りを曲がった。
…留華が倒れてる。
その胸倉を掴むのは和。
湊は和を制御しようとしていた。
いる事に気が付いたのか、和と湊は私の方を向いた。
目を見開いた後、和が少し綻ばせた。
「お嬢、探した──、」
伸び掛けた手をすり抜けて。
「留華!」
私は倒れる留華の方に向かった。