天然お嬢と双子の番犬さん
身体を起こす留華にビクリと反応した。
救急箱を漁っているのを横目に身体を起こす。
留華は湿布を取り出すと私の手首に貼った。
ツーンとした匂いがする。
「あり…がとう」
ぎこちない笑顔だったと思う。
今まで通りに出来ない。
留華に持っていた特別な感情は何処に行ったんだろうか。そんな事さえ考える。
嬉しかったはずの手が、今は少し違う気がする。
「お嬢、俺を見て」
ビクッ、
さっきと同じ台詞。
だけど今度は優しい。
目が合ってから、留華は私の頭を撫でた。
留華、だ。
いつもの…私の知ってる留華だ。
「っ…留華」
「ん?」
”どうしてこんなことするの?”
そう言うのが、普通なんだろうか。
「───…痛くない?」
目を見開いた留華の頬に触れるか触れないかの距離で手を止めた。
出た言葉は、そんな物じゃなかった。
「氷でも冷やした方が───、」
残らないといいけど…。顔に残るなんてきっとみんな心配する。
「…は、」
帰ってきた言葉は気の抜けた声だった。