天然お嬢と双子の番犬さん
「お嬢、ちゃんと部屋にいるんだ。いい?」
部屋の前、戸を開けた留華が最後に笑顔で言った台詞。
「う、うん!」
「返事はいいね」
だって、留華には分かるんでしょ?
耳元へ顔を近付ける留華が中腰になった。
「すぐに戻って来る。それまで俺の事考えて待っていて」
留華の事───…、
チュッ、と耳の近くで音がして身体が跳ね上がった。
「ぴゃっ、!」
吃驚したのは自分の声にも。
…っ、変な声。
留華が口元を緩めた。
口を塞ぐ手を退けられる。
「すぐ戻るよ」
と、言って唇に触れた。
触れただけのキスだった。
さっきとは別人。
前の留華に戻った感じ。
「る…留華?」
「ん?」
言いかけて辞める。
頭を左右に振ってからニコリ。
「お仕事頑張ってね」
モヤッとしてる。
いつも留華に感じてた物とは、少し違う気がする。
留華の背中に手を振った後だった。
「───っ!?」
背後から出てきた手に引っ張られ、戸を閉められたのは。