天然お嬢と双子の番犬さん
「おや、じ」
部屋に漂う緊張感。
パパは上着を脱ぐと私に掛けた。
煙草とパパの匂いで包まれる。
赤ちゃんを抱っこするかのように、軽々と抱きかかえられる私はパパの胸の中。
「暫く俺の部屋で一緒に過ごそう」
ニコリ。
私にはいつも通りのパパの声で。
いつも通りの笑顔で話してくれる。
和に向けていた低い声と殺気は一切ない。
「で、も」
…和は?
私の視線の先を追うパパは、一度和に視線を向けた後で遮った。
パパの影になっていて和が見えなかった。
「────俺は人を見る目が無いらしい。
花を守るつもりが、逆に危険に晒してしまったようだ」
「…パパ、違うよ。そんな事」
「いいや、何も違くない。花は何も悪くない」
ドクン、
心臓が跳ねている。
いつもより、高く。
音が近く感じる。
「東雲和、東雲湊」
ドクン、
「今、この瞬間から…お前等を花の”番犬”から解任する」