天然お嬢と双子の番犬さん
酒井先生のお陰だね。
上手に出来た。
でもあくまでも応急処置。
このままにしてれば悪化してしまう。
なんとかして、戻らないと。
左足を庇いながら、立ち上がる。
…木が近くにあって良かった。
お陰でゆっくりだけど立つことが出来た。
「ありがとう」
木にそう言ってから、木から木へ伝い歩いた。上には登れないと思っての行動だった。
────だけど、これが裏目に出た。
「っ…行けると思ったのに…」
前に木がない。
あるのは坂を登った先と下った後。
戻れば────…、
「…あ、!」
木に届かず転んだ。膝が痛い。
さっきは届いてたのに、届かなかったのは躊躇したから。
”誰も助けに来てくれない”
留華の言葉がふと横切ったんだ。
さっきの場所に戻っても、誰も来てくれないかもしれない。