天然お嬢と双子の番犬さん


***




ガサッ、

さっきまで花がいた山の中。
葉を踏みしめる音がした。


黒いサングラス越しに誰かを見ている。



「────…五十嵐花、」



全身黒い服に身を包んだ男は、黒の手袋を引っ張る。

銀色の長い髪を束ねた姿。
男は内ポケットからスマホを取り出した。


誰かに電話を掛けている。


五回目のコールの後、留守電に切り替わった。
男は無表情のまま一言。



「完了」



とだけ言って電話を切った。

スマホを戻した後、黒いワイシャツに視線を向ける。


黒色に混ざる、別の色。
男は溜息を吐いた。




「………あの女(・・・)のせいで、買換えですね」




そう言うと、地面に落ちた大きな影を掴む。

それは茶色い毛のした生き物で。男は自分よりも大きなそれを溜息交じりに引きずっていた。



「……熊肉は苦手ですが、仕方ありませんね」



男は小さく呟いた。




***

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