天然お嬢と双子の番犬さん

気難しい人




土曜日。快晴。気温は普通。

明後日からはお休み無しの一か月間が始まる。そんな休日。



…好きにしていいって言ったのはそっちだからね。

────なので、脱走したいと思います!




「何処に行くつもりですか」

「う、わああ!?」




絶叫。そして顔を上げた。
目の前には無表情のリヒトさん。


「なな…なんでいるの!?」


そう言ったのには訳がある。

何故ならさっき、廊下には誰もいない事を確認したから。顔を出して左右確認万全、人の気配すら感じなかった。


だから出ようとしたのに…!!
何処から出てきたの!?


も、もしかして!?


「隠れみ術!!?」

「訳の分からない事ばかり言っていないで質問に答えてくれますか」


大きな溜息と眉間のしわ。
無表情な人だけど雰囲気で”怒っています”と言っている。


だってさっきいなかったから…てっきり。



「そ、その…リンを探しに行こうかなぁって~…」



嘘だけど!


リヒトさんは「ああ」と言うと、私に手を出すよう指示をする。



「これの事ですか」

「リン!?!」


どーんっとおかれたのは首根っこを掴まれたリン。
どうやらリヒトさんの引っ付き虫になっていたみたい。


そんなぁ!!リンを口実に抜け出す作戦が…!


「用は済んだでしょう。部屋に戻ってくださ…」

「あー!!そうだったー!トイレも行きたいんだったー!」


挙手&棒読み。


「……トイレですか」


そうそう!そうだよ!
部屋にトイレは無いからね!

行かないといけないよねぇ~!仕方ないよね~?ね!?



「行って来る…ねッ!?」



リヒトさんの横を通り過ぎようとした瞬間、地面から足が離れた。



「ちょ…!?」

「分かりました。では行きましょう」

「全然分からないよ!!」



軽々っと俵持ち。
私の担ぎ方が物凄く雑過ぎる。

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