天然お嬢と双子の番犬さん
「これなら行ける────など、考えている訳ではありませんよね?」
「か、考えてました。ごめんなさい」
「素直なのは評価しましょう」
一歩、踏みだす前にシルエット。
見下ろすリヒトさんを見上げ汗ダラー…。
この人は一体どうやってここまで来たの。
物音一つしなかったけど…!?
私だって極道の娘だし。それなりに敏感な方だと思うんだけど!
「すみません。仕事上、物音を立てれないので」
どこで私の言いたい事が分かったのか。
どうしてそう簡単に伝わるのか不明。
…仕事?
「別で仕事してるの?リヒトさんも極道の人じゃないの?」
「知らない方が身のためです」
そう言われると更に気になるんだけど。
勿体ぶらずに教えてくれればいいのに!
「そんな事より────…、」
身体を押され、部屋に戻された。
強く押されたせいで足がもつれる。
重心が後ろ、倒れかける私のに手を回す。
ちょっとだけ浮いた身体。支えてくれるのはリヒトさんが腰に回してくれた手だけ。
「何故貴女は私に従えないのですか?そんなにも怪我をしたいと言うのなら、その通りにして差し上げましょうか?」
落とされかけたあの時のように、鼓動が早まる。
「…それは怖いよ。痛そうだし…」
「そうですね。骨が折れれば打撲よりも痛いでしょう」
デ、デスヨネ…?
「そう思っているのに何故、逃げ出そうとするのです?」