離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


 今日は、一泊で温泉旅行に行く約束をしている日。

 約束の一カ月内で仕事の予定がお互いにつく日が今日だった。

 達樹さんは玄関にまとめて置いておいた私の荷物を見たのだろう。


「はい。昨日のうちに用意しておきましたよ」


 そう言うと、達樹さんは私の頭をよしよしと撫でてくれる。

 それだけで鼓動がトクトクと高鳴り出す。


「少ししたら出発するか」

「そうですね」


 今回の目的地は箱根。東京から車で二時間ほどで到着するという。

 私がしたいと挙げたことの中に温泉と旅行があったから、達樹さんはふたつを掛け合わせて箱根の温泉宿を予約してくれた。

 この短い一カ月の中でまさか旅行にまで行く予定を入れてくれるとは思っていなくて、一泊で温泉旅行に行こうと言われたときには驚いたし、忠実に私の願いを叶えてくれる行動力と気持ちが嬉しかった。

 午後三時近くにマンションを出発し、車で約二時間近くで目的の箱根に到着した。


「うわ、すごい……」


 達樹さんが取ってくれた宿は、ネットで見てみると箱根の高級旅館十選に選ばれる贅沢な宿だった。

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