離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「どれも素敵で……どうしよう」

「確かに、これだけ種類あると悩むな」


 そう言いながら、達樹さんはさっさと自分の浴衣を「これで」とチョイスする。

 達樹さんが選んだのは、黒に近いダークグレーの無地だ。絶対に似合う。

 達樹さんの浴衣姿を想像して、横に並んだときにいい感じに見える色味にしようと悩んだ結果、紫寄りの淡いピンクの浴衣を選んだ。

 しばらく悩んでいた私に女性スタッフは微笑を浮かべて「とてもお似合いになると思います」と選んだ浴衣と帯を手渡してくれた。

 浴衣を選び終え、今度は客室係のスタッフに先導されて館内を進んでいく。

 案内された部屋に入り、また遥かに想像を超えた客室に「すごい……」と呟いてしまった。

 和の趣を感じる和室と、広々としたベッドルームを備えた豪華な部屋。

 箱根連山を見渡す絶景の眺望デッキにはデッキチェアが置かれ、源泉掛流し露天風呂がついている。

 まさに日常を忘れてくつろげる癒しの空間だ。


「では、どうぞごゆっくりおくつろぎください」


 客室内の説明を終えたスタッフが部屋から立ち去っていくと、早速露天風呂を見に部屋の奥のデッキへと向かう。

< 107 / 145 >

この作品をシェア

pagetop