離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「すごい……何この眺め。贅沢すぎる……」


 ガラス窓に貼りついて、露天風呂とその向こうに望む景色に感嘆のため息をついていると、後からやってきた達樹さんが背後からふわりと私を包み込む。


「気に入った?」


 耳元で囁くように訊かれ、どきりとしながらもこくこくと頷く。


「はい、すっごく。こんな素敵な宿を予約してくれてたんですね」

「それなら良かった」

「部屋に温泉がついてるなんて、それだけで贅沢ですもん」

「後で一緒に入ろうな?」

「えっ……!」


 い、一緒に入る!?


「一緒に、ですか?」


 それは要するに、お互い裸になって、ということなわけで……。

 目の前でこんこんと湧く温泉を見ながら、その光景を脳内で想像してみる。

 考えただけでも猛烈に恥ずかしくて、じわじわと顔面が熱くなってくる。


「だめ? それを楽しみに露天風呂付きの部屋にしたんだけど」


 そんな風に言われてしまうと、だめだとは言いづらくなる。

 楽しみに、なんて言われると敵わない。

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