離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
チェックインの時間が夕方だったため、すぐに夕食の時間となった。
食事は地元相模湾で採れる海の幸や箱根伊豆の山の食材をメインにした、本格懐石料理。
目にも美しい料理の数々は上品で、繊細な味の邪魔をしない香りの主張のないワインと一緒に楽しんだ。
食事を終えると、旅館内の庭園を散策してみようということになった。
お互いに借りた浴衣を身につけ、客室を出ていく。
「みのり、浴衣姿も可愛いな」
部屋を出てすぐ、私の姿をまじまじと見た達樹さんが手を差し出しながらそんな感想を口にする。
着替えを終えた直後は特に何も言われなかったから、浴衣は特に好きでもないのかと思っていた。
「そうですか? ちゃんと着られてますかね……?」
「うん。部屋出るまでじっと見ないようにしようと思って正解」
「え? なんでです?」
小首を傾げると、達樹さんはフッと笑って私の手を引く。
「散策が中止になるところだった」
そう耳元で囁かれ、意味を察して目を見開く。
「な、何言ってるんですか……!」