離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
「みのり? いつまで向こう向いてたらいいんだ?」
「えっ、えっと……わっ!」
返事をする前に背後から達樹さんの腕が回ってくる。
「入ったならもういいよな?」
そう言って後ろから抱きしめられ、ざばっと湯舟から湯が溢れた。
湯に浸かったら、私が背中を向けていれば達樹さんがこっちを向いても大丈夫だと思ったけど、こうして腕を回されてしまうと背中に体が密着してやっぱり恥ずかしい。
そんな状況でも、静寂に包まれた森林を目の前に心が癒される。
「ここ、マイナスイオンすごそうですね……」
「確かに。掛流し温泉に、森林浴は贅沢だな」
「明るくなってから入ったら、またいい眺めで良さそうですね」
ちょろちょろと温泉が流れる音を聞きながら、体が温まっていく心地いい感覚に目を瞑る。
「ひゃっ!」
すると突然、髪をアップにして出しているうなじに達樹さんの唇が押し当たった。
不意打ちなことに思わず変な声を上げてしまう。
周囲にも露天風呂のある客室があるはずだと思い、慌てて両手で口元を覆った。
声を上げないようにしている私に構わず、達樹さんは普段出していない襟足に次々と口づけを落としていく。